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「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティ:Agatha Christie – And Then There Were None

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And Then There Were None

And Then There Were None

Ten little Indians

Ten little Indian boys went out to dine ;
One choked his little self, and then there were nine.

Nine little Indian boys sat up very late ;
One overslept himself, and then there were eight.

Eight little Indian boys travelling in Devon ;
One said he’d stay there, and then there were seven.

Seven little Indian boys chopping up sticks ;
One chopped himself in half, and then there were six.

Six little Indian boys playing with a hive ;
A bumble-bee stung one, and then there were five.

Five little Indian boys going in for law ;
One got in chancery, and then there were four.

Four little Indian boys going out to sea ;
A red herring swallowed one, and then there were three.

Three little Indian boys walking in the Zoo ;
A big bear hugged one, and then there were two.

Two little Indian boys sitting in the sun ;
One got frizzled up, and then there was one.

One little Indian boy living all alone ;
He got married, and then there were none.

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「ミステリーの女王」アガサ・クリスティ(Dame Agatha Christie , DBE:1890-1976)の「そして誰もいなくなった」(And Then There Were None)です。

推理小説(detective fiction、The whodunit)のプロットを書く、または読むことほど興醒めなこともありませんので、書きませんが、この小説の設定だけ書いておきます。
物語は、イギリスのデヴォン州沖にあるインディアン島に、島のオーナーであるオーエン夫妻に、互いに見知らぬ8人の男女が招かれ、伝承童謡のマザー・グースの歌「10人のインディアン」(Ten Little Indiansはマザー・グースではありませんが…)になぞらえて連続殺人事件が起こるというもので、クローズド・サークル、外界とは隔絶された状況下で事件が起こる推理小説の代表的な作品です。

マザー・グースの童謡に合わせて惨劇が起こるという設定は、S・S・ヴァン=ダイン(S. S. Van Dine:1888 -1939)の「僧正殺人事件」(The Bishop Murder Case:1929)が先駆的な傑作で、その後にエラリー・クイーン(Ellery Queen)の「靴に棲む老婆」(There Was an Old Woman:1943)などがあります。アガサ・クリスティの作品では、ミス・マーブル物の「ポケットにライ麦を」(A Pocketful of Rye:1953)、エルキュール・ポアロ物の「愛国殺人」(One, Two, Buckle My Shoe/An Overdose of Death:1940)、「五匹の子豚」(Five Little Pigs/Murder in Retrospect:1943)、「ヒッコリー・ロードの殺人」(Hickory, Dickory, Dock/Hickory, Dickory, Death:1955)や「ねじれた家」(Crooked House:1949)などがあります。こうしたモチーフに合わせて殺人が起こることを「見立て殺人」と言いますが、読者に物語の若干のヒントと予告を与えることで、緊張した興味を持続させる推理小説の手法のひとつです。

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クリスティーの人間不信が色濃く出た偶像劇

アガサ・クリスティは、この「そして誰もいなくなった」で、「見立て殺人」の手法を効果的に使っています。特にこの作品には、ポアロなどの頼れる探偵役がおらず、読者は登場人物たちと同じような不安感を持ちます。アガサ・クリスティは、状況によって変ってゆく登場人物たちの心理描写によって、読者にこの「不安感」というスリル、言い換えれば物語への興味を持続させます。知的なゲームである推理小説の殺人は、ヴァン・ダインが言ったように、読者の好奇心を惹き付けるための重要な要素ですが、アガサ・クリスティはこれに、探偵や味方がいない「不安感」という心理的な要素を加えました。

また、アガサ・クリスティの小説は、地理、風俗的な興味と社会的な立場や経歴など多彩な登場人物たちによる群像劇としての魅力があり、それが舞台劇や映画化に適しています。アガサ・クリスティ作品が、性格俳優たちや、オールスター・キャストに向いているとも言えます。
ルネ・クレール(René Clair:1898-1981)の1945年の映画「そして誰もいなくなった」は、第二次世界大戦時のフランスからハリウッドに移っていた時期に監督した作品で、当時のキャスティングも良い作品です。結末は演劇シナリオに基づいています。
ソヴィエトのオデッサ・フィルム・スタジオ(Odessa Film Studio)製作の1987年の映画「10人のインディアン」(Десятъ нергритят:Ten Little Indians)も良い俳優たちと丁寧な作りで、この小説の映像化作品の佳作です。

しかし殺人ゲームとしては楽しめるのですが、クリスティーの人間不信や懲戒必罰などが行間から伝わってくるようで読後の爽快感はありません。念のため。

そして誰もいなくなった:Wikipedia (…犯人が分ってしまうので、原作を知らない人は読まないでください。)
アガサ・クリスティ:Wikipedia
Agatha Christie: The Official Online Home

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