PR

天井桟敷の人々:Les Εnfants dυ Ρaradis (1945)

映画関連
記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク
スポンサーリンク

天井桟敷の人々:Les Εnfants dυ Ρaradis (1945)

第二次世界大戦まもなく公開されたフランス映画の傑作。

Baptiste pickpocket scene

Baptiste pickpocket scene

Three Reasons: Children of Paradise

Three Reasons: Children of Paradise

製作:フレッド・オラン
監督:マルセル・カルネ
脚本:ジャック・プレヴェール
撮影:ロジェ・ユベール
音楽:ジョゼフ・コスマ

出演:アルレッティ
ジャン・ルイ・バロー
マリア・カザレス
ピエール・ルノワール
ピエール・ブラッスール
マルセル・エラン
マルセル・ペレス
ルイ・サルー

スポンサーリンク

「天井桟敷の人々」(Les Εnfants dυ Ρaradis / Children of Paradise)はフランス(映画)文化の復活と誇り

11月3日は「文化の日」。終戦後まもない昭和21年(1946年)に「自由と平和を愛し、文化を薦める。」祭日として制定、公布させました。この日は古くは、明治天皇の誕生日で「明治節」と呼ばれていました。昭和天皇の誕生日が「みどりの日」に変わったことと同じようなものですが、GHQとしては戦前の祝日を尊重、継承しつつ、国民に強く根付いた旧軍国主義時代の天皇制に対する意識を消す意図もあったようです。

ところで「自由と平和を愛し、文化を薦める。」とは一体どのようなことでしょうか?その具体的な例として、ここにひとつの素晴らしい映画があります。それが1945年のフランス映画の金字塔「天井桟敷の人々」(Les Εnfants dυ Ρaradis / Children of Paradise)です。
日本ではこの映画は昭和27年(1952年)に公開されました。ちなみに寺山修二(1935-1983)が主宰した「劇団天井桟敷」はこの映画の邦題から付けられたものです。原題は「天国、エデンの園の子供たち」で、おそらく現実社会を離れた舞台に生きる芸人たちの意味だと思いますが、そのイメージを伝えた邦題も秀逸です。

「天井桟敷の人々」は、第二次世界大戦において、1940年5月のドイツ軍の侵攻、6月14日のパリ無血入城、6月21日のフランス降伏、そしてそれに伴うドイツの傀儡政権であったヴィシー(ヴィシー:Vichyはフランス中部の温泉保養地。降伏後にここに首都を移したことから、こう呼ばれました。)政権下で製作されました。
この映画は占領下、戦時下において3年3ヶ月を費やして完成したものです。実際にはドイツが占領したフランス北部、イタリアの占領した南部を除いた部分のフランス政府の自治が認められた非占領地で撮影されました。ニースに19世紀半ばまでパリ3区に存在したタンプル大通り(boulevard du Temple)、通称「犯罪大通り」(1862年からのナポレオン3世によるパリ大改造で消滅した歓楽街。ちなみにアドルフ・ヒトラーが占領したパリで最初に観光したパリ・オペラ座・ガルニエ宮[Palais Garnier]の建設や、前の大通りの区画整備、道路拡張などもこの都市計画によるものです。)を400mの大セットで再現し、多数のエキストラを動員して撮影が進められました。

スポンサーリンク

戦時下での文化人、映画関係者たち

多くの文化人、映画関係者たちがフランスを離れて他国に亡命した中で、自国に留まり長編大作を作り上げた監督マルセル・カルネ(Marcel Carné:1906-1996)や脚本のジャック・プレヴェール(Jacques Prévert:1900-1977)らのスタッフとアルレッティ(Arletty:1898-1992)、ジャン・ルイ・バロー(Jean-Louis Barrault:1910-1994)らのキャストらの気迫ある名演は、まさに「自由と平和、文化」を脅かす者たちへの抵抗の形でした。現代の人たちから見れば、戦時下で悠長に映画を撮っていたと思われるかもしれませんが、当時の統制、検閲が厳しく、密告が横行し、物資が不足する中で巨額の費用を投じて映画を作ることの困難さを思わなければなりません。
映画人や作家、音楽家、俳優たちが慣れない武器を持って戦うことも抵抗ですが、自分たちにできること、自分たちの才能を生かすことで、自国の文化を後世に継承してゆくことも自由と平和を守る抵抗になり得るのです。この映画に参加した人たちは、映画によって伝えることができるものを強く信じていたのだと思います。

映画のストーリーは一人の美貌の女芸人ガランスを巡る4人の男たちの物語です。近世のフランス庶民の一大叙事詩のような重厚さも兼ね備えています。ジャック・プレヴェール(『枯葉』を書いた詩人)の洒落たセリフの数々は、「フランス流のセンスある機知は野暮なナチスドイツには分るまい。」というさりげない気概も感じられますが、物語全体では、アルレッティが演じた女芸人ガランスと、ジャン・ルイ・バローが演じたパントマイム役者バチストの「愛」の孤独がテーマとなっています。人を愛しても愛されても心に潜む孤独、文芸ロマンスとしても一級の脚本です。もちろんそれを演じたアルレッティ、ジャン・ルイ・バローの名演は言うまでもありません。
「天井桟敷の人々」生涯に一度は見ておきたい映画です。

劇中劇で女芸人ガランス(アルレッティ)が演じた弓を持った彫像は、ギリシャ神話のアルテミス(ローマ神話のダイアナ)、狩猟・純潔の女神です。このシーンはバチストの「叶わぬ愛」を象徴しています。また、叶わぬ愛に翻弄される道化の比喩もあります。これは映画のテーマを暗示する重要なシーンです。

天井桟敷の人々:Wikipedia
マルセル・カルネ:Wikipedia
ジャック・プレヴェール:Wikipedia
ジャン・ルイ・バロー:Wikipedia
アルレッティ:Wikipedia

コメントをどうぞ