夢見る人 [歌詞と解釈](ビューティフル・ドリーマー/夢路より)スティーブン・フォスター:Stephen Collins Foster – Beautiful Dreamer

Al Jolson – Beautiful Dreamer (1950)
(意訳)
1
麗しき夢見る人よ、我れに目覚めよ
星の光と露の雫が汝を待つ
日中に聞きし野卑なる世の音共
月の光に和らぎて、みな過ぎ去りぬ
麗しき夢見る人よ、我が歌の女王、
優しき調べにて我れが汝を求めるを聴け
人生の慌しき諸々の不安は去らん
麗しき夢見る人よ、我れに目覚めよ
麗しき夢見る人よ、我れに目覚めよ
2
麗しき夢見る人よ、海に出でよ
人魚たちは荒振るローレライを歌う;
小川の上に霞立ち、
来たる夜明けの輝きに消え行くを待つ
麗しき夢見る人よ、我が心に光射せ
小川や海の夜明けの如く
悲しみの雲、消え去らん
麗しき夢見る人よ、我れに目覚めよ
麗しき夢見る人よ、我れに目覚めよ
Beautiful Dreamer 歌詞
1
Beautiful dreamer, wake unto me,
Starlight and dewdrops are waiting for thee;
Sounds of the rude world heard in the day,
Lull’d by the moonlight have all pass’d away!
Beautiful dreamer, queen of my song,
List while I woo thee with soft melody;
Gone are the cares of life’s busy throng,
Beautiful dreamer, awake unto me!
Beautiful dreamer, awake unto me!
2
Beautiful dreamer, out on the sea
Mermaids are chaunting the wild lorelie;
Over the streamlet vapors are borne,
Waiting to fade at the bright coming morn.
Beautiful dreamer, beam on my heart,
E’en as the morn on the streamlet and sea;
Then will all clouds of sorrow depart,
Beautiful dreamer, awake unto me!
Beautiful dreamer, awake unto me!
ビューティフル・ドリーマー(Beautiful Dreamer/邦題:「夢見る人」/夢路より)は、スティーブン・フォスター(Stephen Collins Foster/1826-1864)の作品です。
「Beautiful Dreamer」は彼が最期の日々に書きあげた絶筆・遺作で、美しいメロディで年齢を問わずに多くの人々に親しまれている名曲です。そしてこの曲は、晩年のフォスターの楽曲に捧げた、彼のたどり着いた楽曲への愛の境地といったものが現れているます。
後に「アメリカ音楽の父」と称されるフォスターですが、彼の晩年は悲惨なものでした。彼の数ある楽曲からの報酬を得ることも少なく、妻や子供と別れてニューヨークで困窮した酒びたりの暮らしを続け、アルコール依存症になっていました。そして冬の1月に、一人暮らしの安アパートで、不慮の事故によって37歳で夭逝しました。
スティーブン・フォスターが「アメリカ音楽の父」と称される由縁は、彼の作品がシンプルでありながらも類まれな完成度であること、そうでありながらも汎用な可能性を持っていることにあります。一見親しみあるメロディなのですが、突きつけて聴けば、その作品はウィスキーに喩えればピュアモルトのように純粋でアメリカ音楽の原点として大きな源流を残したということです。
ここでビューティフル・ドリーマーの歌詞についての個人的考察による解釈を少し書いてみたいと思います。
歌詞は少し古風な英語で書かれています。「意訳」はこれを古文調の日本語にしたものですが、雰囲気は伝わると思います。そもそもこの歌の「Beautiful Dreamer」はフォスター自身の音楽的才能に眠るミューズ(Muse)であり、彼が求めた音楽の擬人化した比喩です。(そういえばMusicやMuseumの言葉はMuseから派生したものでした。)そう捉えることで、生活の困窮や昼間の喧騒などの煩わしい現実から逃れ、夜毎に若き日の輝かしい才能が甦り、自分を音楽の美しい世界へ誘うことを願った音楽家フォスターの心境が感じられると思います。
「Mermaids」(人魚たち/サイレーンも連想します)や「lorelie」(ローレライ)の言葉は美しい音楽の魔法的な魅力を喩えています。その魅惑に満ちた喜びこそがフォスターが追い求めたもので、彼の精神を自由へと導く唯一の望みを満たすものだったのだと思います。そして、何よりもこの「Beautiful Dreamer」が完成し、再び音楽のミューズの元にあったとき、彼の心から「Then will all clouds of sorrow depart:悲しみの雲、消え去った」のだと解されます。
Bing Crosby – Beautiful Dreamer
Marilyn Horne – Beautiful Dreamer
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