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「モルグ街の殺人事件」エドガー・アラン・ポー :Murders in the Rue Morgue

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Murders in the Rue Morgue (1932) - Bela Lugosi - Poe - Horror

Murders in the Rue Morgue (1932) Trailer

Murders of the Rue Morgue with Lugosi Shriektv style

Murders of the Rue Morgue with Lugosi Shriektv style

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1932年「モルグ街の殺人事件」(Murders in the Rue Morgue)ポー小説の初映画化作品

映画「モルグ街の殺人事件」(Murders in the Rue Morgue)は、1931年に「フランケンシュタイン」(Frankenstein)の脚本を担当したフランス人監督ロバート・フローリー(Robert Florey:1900-1979)の作品です。主演はブラム・ストーカーの吸血鬼小説を映画化した「魔人ドラキュラ」(Dracula:1931)に主演したハンガリー出身のベラ・ルゴシ(Bela Lugosi:1882-1956)、共演は24歳の新人女優シドニー・フォックス(Sidney Fox)です。シドニー・フォックスはたった2本の映画に出演しただけで引退、その後結婚しましたが10年後の1942年11月14日に睡眠薬の多量摂取で亡くなりました。早すぎる引退はこの映画の共演者とのゴシップが原因と言われました。

映画「モルグ街の殺人事件」のストーリーは、エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe:1809-1849)の短編小説の舞台設定と殺人事件の顛末を元にしていますが、人間と獣の血を融合することに憑かれた医師役ベラ・ルゴシの犯罪怪奇映画としています。「モルグ街の殺人事件」は「黒猫」「アッシャー家の崩壊」とともにエドガー・アラン・ポーの原作では数多く映画化される作品ですが、怪奇性を重視したものが多いようです。
この映画の評価は「フランケンシュタイン」や「魔人ドラキュラ」の陰に隠れて高いものではありません。しかしこの映画にはアメリカの娯楽映画にその後も受け継がれている要素が見られます。

アメリカ映画にはゴリラや猿人を怪物とするものが多く有ります。最も初期の作品は「恐竜とミッシングリンク」(The Dinosaur and the Missing Link:1917)の猿人(ミッシングリンク)です。その後にはウェズリー・バリー(Wesley Barry)主演で死刑囚の脳髄をゴリラの肉体に移植した死刑囚が殺人鬼と化す映画「鳥人獣人」、同様なものでロン・チャニーの「ブラインド・バーゲン」(A Blind Bergen:1922)があります。これらは「フランケンシュタイン」の亜流でもあり、「モルグ街の殺人事件」の系譜も継いでいます。そしてこの延長線上にあるのが1933年の映画「キングコング」(King Kong)や1949年の映画「猿人ジョー・ヤング」(Mighty Joe Young)になります。オランウータンが美女をさらって夜のモルグ街(パリの架空の街の歪んだような造詣は非日常的です。)の屋根に登るシーンはそのまま「キングコング」に受け継がれています。
また、この映画は獣人と並ぶ怪奇映画の主要な要素であるマッド・サイエンティスト映画としても楽しめます。特にこの映画が魅力的であるのは舞台で鍛えたベラ・ルゴシの圧倒的な演技によるものです。個人的にこの映画が好きな理由は彼の存在感にあります。映画の出だしの見世物小屋のシーンが谷崎潤一郎の大正7年の小説「魔術師」やトーマス・マンの小説「マリオと魔術師」(Mario und der Zauberer)を思わせる、異界に踏み込むような雰囲気は秀逸です。

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「モルグ街の殺人事件」エドガー・アラン・ポー

エドガー・アラン・ポーの原作「モルグ街の殺人事件」です。「モルグ街」の「モルグ」はフランス語の死体安置所からポーが付けた架空の街です。タイトルだけでも19世紀のパリの暗い下町を連想させます。そこで不可解で凄惨な殺人事件が起こるというシチュエーションは、大いに読者の好奇心と探究心を刺激します。ポーは謎が不可解で大きいほど解決されたときの爽快感があることをよく心得ていて、その娯楽性に徹してこの小説を書いています。
「モルグ街の殺人事件」は文学史上、初の論理的な探偵・推理小説と言われています。雑誌掲載後の読者の反応や批評家の評価も高かったのですが、ポーとしては単に読者を楽しませるためのパズルのようなもので、自らはあまり評価しなかった作品でもあります。密室殺人、卓越した観察眼と分析力を備えた探偵役のオーギュスト・デュパンのキャラクターなどの独創性も、ポーにとっては自分が目指す文学ではなく、金銭を得るための売文、読者サービスでしかなかったのかもしれません。後年コナン・ドイルがこの小説のエッセンスを使ってシャーロック・ホームズのシリーズで名声を獲得したことや、日本の江戸川乱歩がこの小説をヒントに「D坂の殺人事件」で探偵、明智小五郎を登場させて、同様に名声を得たことを考えると、ポーの不運を強く感じます。

モルグ街の殺人:Wikipedia
Tales (Poe)/The Murders in the Rue Morgue:Wikipedia

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