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秋の歌&巷に雨の降るごとく:Chanson d’automne

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Debussy: Ariettes oubliées: nr. 2 Il pleure dans mon coeur (texte de Paul Verlaine) - Lily Pons

Cheryl Studer sings Debussy ~ Ariettes oubliées ~ II. “Il pleure dans mon cœur”

シェリル・スチューダーが歌うドビュッシー~忘れられたアリエット~II. 「彼は私の心の中で泣いている」(巷に雨の降るごとく)
ライヴ・パフォーマンス、1992年8月、ザルツブルグ、モーツァルテウム、グローサー・ザール、アーウィン・ゲージ (ピアノ) II.

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l pleure dans mon coeur

Il pleure dans mon coeur
Comme il pleut sur la ville ;
Quelle est cette langueur
Qui pénètre mon coeur ?

Ô bruit doux de la pluie
Par terre et sur les toits !
Pour un coeur qui s’ennuie,
Ô le chant de la pluie !

Il pleure sans raison
Dans ce coeur qui s’écoeure.
Quoi ! nulle trahison ?…
Ce deuil est sans raison.

C’est bien la pire peine
De ne savoir pourquoi
Sans amour et sans haine
Mon coeur a tant de peine !

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巷に雨の降るごとく 堀口大學訳

巷に雨の降るごとく
われの心に涙ふる。
かくも心ににじみ入る
この悲しみは何やらん?

やるせなき心のために
おお、雨の歌よ!
やさしき雨の響きは
地上にも屋上にも!

消えも入りなん心の奥に
ゆえなきに雨は涙す。
何事ぞ! 裏切りもなきにあらずや?
この喪そのゆえの知られず。

ゆえしれぬかなしみぞ
げにこよなくも堪えがたし。
恋もなく恨みもなきに
わが心かくもかなし。

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ポール・ヴェルレーヌ(Paul Marie Verlaine:1844-1896)の「秋の歌」(Chanson d’automne)と「巷に雨の降るごとく」(l pleure dans mon coeur)の詩です。

長い夏がやっと終りそうな気配の風が吹いて来ました。
すると自然に思い出すのが、ポール・ヴェルレーヌ(Paul Marie Verlaine:1844-1896)の「秋の歌」(Chanson d’automne)と「巷に雨の降るごとく」(l pleure dans mon coeur)の詩です。余談ですが、l pleure dans mon coeurは、アイゼンハワーがノルマンディ上陸作戦に使ったフランスレジスタンスへ宛てた連合軍の暗号電文でした。
明治までの近代日本の叙情歌は和歌、俳諧、長唄、小唄などの定型詩だったので、輸入されたフランスなどの近代詩は当時の日本人にとってはとても新鮮で自由な表現と映ったと思います。上田敏の「海潮音」(1905:明治38年)にはそんな明治の人たちの新しい叙情への憧れと、日本的解釈が感じられます。これは音楽でも同様です。それから100年余り、私たちはこの先人たちの叙情への憧れが作り上げた新しい叙情の中で生きています。
今日は、ヴァイオリニスト川井郁子もヴェルレーヌも有名なので特に書きません。この美しいヴァイオリンの調べと西洋詩の翻訳を読みながら、秋の始まりの夜に現代の叙情を楽しみたいと思います。

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Chanson d’automne

Chanson d’automne
Les sanglots longs
Des violons
De l’automne
Blessent mon coeur
D’une langueur
Monotone.

Tout suffocant
Et blême, quand
Sonne l’heure,
Je me souviens
Des jours anciens
Et je pleure

Et je m’en vais
Au vent mauvais
Qui m’emporte
Deçà, delà,
Pareil à la
Feuille morte.

Charles Trénet - Verlaine (Chanson d'automne) 1941

シャルル・トレネ「秋のシャンソン」Charles Trenet 1941 – Chanson d’automne

ヴェルレーヌの詩自体が韻を踏んで音楽的なのですが、シャンソンにしたのがこの歌です。

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落葉=秋の歌  ポオル・ヴェルレエヌ (上田 敏:海潮音)

秋の日の
ヴィオロンの
ためいきの
身にしみて
ひたぶるに
うら悲し。

鐘のおとに
胸ふたぎ
色かへて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや。

げにわれは
うらぶれて
こゝかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉かな。

仏蘭西(フランス)の詩はユウゴオに絵画の色を帯び、ルコント・ドゥ・リイルに彫塑の形を具(そな)へ、ヴェルレエヌに至りて音楽の声を伝へ、而して又更に陰影の匂なつかしきを捉(とら)へむとす。

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秋の歌  ポール・ヴェルレーヌ 堀口大學訳

秋風の
ヴィオロンの
節ながき啜泣(すすりなき)
もの憂き哀しみに
わが魂を痛ましむ。

時の鐘
鳴りも出づれば
せつなくも胸せまり
思ひぞ出づる
来し方に
涙は湧く。

落葉ならね
身をば遣る
われも、
かなたこなた
吹きまくれ
逆風(さかかぜ)よ。

ポール・ヴェルレーヌWikipedia
Paul Verlaine:Wikipediaフランス語ウィキペディア
青空文庫:上田敏「海潮音」

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