「ストレンジャー・イン・パラダイス」トニー・ベネット:Stranger in paradise – Tony Bennett

人気がある歌,定番の名曲

Stranger In Paradise (from Duets II: The Great Performances)

Tony Bennett – Stranger In Paradise (from Duets II: The Great Performances)

「Stranger in paradise」は、1953年にニューヨークのジーグフェルド劇場(Ziegfeld Theater)で初演されたロバートライト(Robert Wright)とジョージフォレスト(George Forrest)の編纂によるミュージカル「キスメット(Kismet):運命という意味」の劇中で歌われました。原曲はロシアの作曲家ボロディンの歌劇「イーゴリ公:1890年初演」の劇中歌「ポロヴェツ人の踊り」(Polovetsian Dances)で、日本では「ダッタン人の踊り」と訳されています。原曲はポロヴェツ人が祖国に想いを馳せる歌で、そこに描かれているのは楽園のような美しい国です。
「イーゴリ公」の歌劇に描かれる異邦人のイメージと、「ポロヴェツ人の踊り」の楽園のイメージに触発されて「Stranger in paradise」の歌詞ができたのではないかと思います。20世紀の初頭から半ばまで、アメリカのポピュラーミュージックは古今東西の美しいメロディを取り込みました。それ故にこの時代がポピュラーミュージックの黄金時代となりました。「Stranger in paradise」もその傑作のひとつと言えます。
「キスメット(Kismet)」もアラビアンナイト物語を題材にしたミュージカルなので、アメリカ人にとっては、東ヨーロッパのポロヴェツ人もアラビア人もどちらもエキゾチックなイメージということでしょうか。それはともかく、原曲ののイメージを膨らませて、そこに愛の感情を含ませた歌詞はとても印象的です。美しい風景、美しい物があるだけでは、楽園に迷い込んだ訪問者(Stranger in paradise)でしかないのですが、そこに愛があってこそ本当の楽園であるという意味を含んでいて、この詩は名作だと思います。

私にとっての「Stranger in paradise」の定番は、やはりトニー・ベネット(Tony Bennett:1926-)です。「霧のサンフランシスコ(I Left My Heart in San Francisco)」とともに、少し濁りがある声と抑揚あるヴォーカルはスタンダードとしての残る名唱です。
フランク・シナトラ(Frank Sinatra)、マット・モンロー(Matt Monro)ジョニー・マティス(Johnny Mathis)、エンゲルベルト・フンパーディンク(Engelbert Humperdinck)など多くの歌手がカバーしていますが一番はトニー・ベネットです。

Stranger in paradise

Take my hand
I’m a stranger in paradise
All lost in a wonderland
A stranger in paradise
If I stand starry-eyed
That’s the danger in paradise
For mortals who stand beside an angel like you

I saw your face and I ascended
Out of the commonplace into the rare
Somewhere in space I hang suspended
Until I know there’s a chance that you care

Won’t you answer this fervent prayer
Of a stranger in paradise
Don’t send me in dark despair
From all that I hunger for
But open your angel’s arms
To this stranger in paradise
And tell him that he need be
A stranger no more

Borodin: Prince Igor Polovtsian dances (Kochanovsky)

Polovetsian Dances (ボロディン:歌劇「イーゴリ公」から「ダッタン人の踊りと合唱」)
「ポロヴェツ人の踊り」(Polovetsian Dances)、ポロヴェツ人は東ヨーロッパ東部の民族で、日本ではあまりなじみがないので、モンゴル民族の「ダッタン人/韃靼人」(タタール人:Tatars)として標記されたのではないかと思われます。ポロヴェツ人の祖国への想いを歌ったもので、そこにあるイメージは民族の魂の地としての楽園(paradise)を連想させます。

トニー・ベネットの「霧のサンフランシスコ」も載せておきます。聴いてみてください。

Tony Bennett - I left my heart in San Francisco

Tony Bennett – 「霧のサンフランシスコ」I left my heart in San Francisco (Union Bank of California promo)

Stranger in Paradise (song):Wikipedia
トニー・ベネット:Wikipedia