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「無心の歌、有心の歌」ウィリアム・ブレイク:Song of Innocence and of Experience – William Blake

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ウィリアム・ブレイク(William Blake:1757-1827)の「無心の歌、有心の歌」(Song of Innocence and of Experience:訳により、『無垢と経験の歌』の題もあります。)です。

ウィリアム・ブレイクは、今でも多くの作家やアーティストに影響を与えているイギリスのロマン派の神秘主義詩人、画家です。
詩集として有名なのがこの「無心の歌、有心の歌」で、タイトルのとおり「無心の歌」と「有心の歌」に分かれています。「無心の歌」は、人間の無垢の姿である幼な児の心を、その序詞にあるようによろこびの歌として明るいビジョンで、「有心の歌」は人生の経験により得た有情の心を、イメージに富んだ言葉で、ときには暗く悲しく描いています。言葉を変えれば、「無心の歌」は読者を無垢であったときの気持ちに帰すもの。「有心の歌」は、経験で得た知識と良識を以って人の世を見る気持ちを認識するものです。

「無心の歌」と「有心の歌」にはいくつかの対比した歌があります。この「聖木曜日」(Holy Thursday=昇天祭)もそのひとつです。ブレイクは、無垢な子供、本来の人間の姿に宗教を超えた神のヴィジョンを見た詩人です。それは聖母マリアに抱かれる幼な児のキリストに純粋な愛と、未知な世界と未来へ踏み出す力強さを認識した強いビジョンです。「無心の歌」の「聖木曜日」では、慈悲ある人たちに見守られ、少年少女はその喜びを祝福されています。それに対して「有心の歌」の「聖木曜日」では冷酷な現実が、神聖であるべき幼な児の自由を抑圧し、貧困に追いやっている社会に対する抗議と警鐘が歌われています。

それでは、誰もが無垢であったはずなのに、その経験を通して作り上げた社会・国はどうしてこんなにも無情であるのか?ウィリアム・ブレイクの求めた答えは未だにありません。とすると現代の私たちは2世紀前の詩人と同時代にあると言えます。私たちは、この富める国の貧しい社会で、経験により何を得て、何を失ったのでしょうか?

ウィリアム・ブレイクの作品は、古臭くも説教臭くもありません。多くの示唆と豊かなイマジネーションに富んだものです。他の詩も、また、彼の幻想的な絵画作品についても紹介したいと思いますが、それは日をあらためて…。

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Holy Thursday (Song of Innocence)

’Twas on a Holy Thursday their innocent faces clean
The children walking two & two in red & blue & green
Grey headed beadles walk’d before with wands as white as snow
Till into the high dome of Pauls they like Thames waters flow

O what a multitude they seem’d these flowers of London town
Seated in companies they sit with radiance all their own
The hum of multitudes was there but multitudes of lambs
Thousands of little boys & girls raising their innocent hands

Now like a mighty wind they raise to heaven the voice of song
Or like harmonious thunderings the seats of heaven among
Beneath them sit the aged men wise guardians of the poor
Then cherish pity, lest you drive an angel from your door

Holy Thursday (Song of Experience)

Is this a holy thing to see,
In a rich and fruitful land,
Babes reduced to misery,
Fed with cold and usurous hand?

Is that trembling cry a song!
Can it be a song of joy?
And so many children poor,
It is a land of poverty!

And their sun does never shine.
And their fields are bleak & bare.
And their ways are fill’d with thorns
It is eternal winter there.

For where-e’er the sun does shine,
And where-e’er the rain does fall:
Babe can never hunger there,
Nor poverty the mind appall.

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意訳

目にしているこのことが尊いことであるのか、
富んで豊かな国にあって、
幼な児たちが惨めさにさらされ、
冷たく冷酷な手で育てられているというのに?

あのおびえた泣き声が歌だというのか!
喜びの歌だといえるのか
余りにも多くの子どもたちが貧しく、
これは貧しさの国だ!

そして彼らには日は決して輝かない。
そして彼らの畑は痩せて朽ちる。
そして彼らの道には荊に満ちている。
そこにあるのは永遠の冬だ。

日が輝くところはどこでも、
雨が降るところはどこでも:
幼な児たちを飢えさせてはならない、
貧しさで心をおびえさせてはならない。

ウィリアム・ブレイクWikipedia
ブレイク ウィリアム:青空文庫「天国と地獄の結婚」「無垢と経験のうた」「笑いの歌」の3作品が読めます。

コメントをどうぞ

  1. ブレイクは詩らしき詩ですね。

    言葉を神話的に止揚しています。そのリズムと流れが天上的ですね。

  2. ウイリアム・ブレイクの神秘的な内政的雰囲気の詩は素敵で好きです。

    という印象です。メールアドレス変りましたのでお報せ。