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映画「二十四の瞳」-高峰秀子主演・木下恵介監督

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二十四の瞳 (デジタルリマスター2007)予告

二十四の瞳 (デジタルリマスター2007)予告

Nijushi no hitomi - Twenty-Four Eyes Trailer (1954)

映画「二十四の瞳」予告編:Twenty-Four Eyes Trailer (1954)

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1954年(昭和29年)の日本映画の名作「二十四の瞳」(にじゅうしのひとみ)です。
原作は香川県小豆島出身の壺井栄(つぼいさかえ)の1952年(昭和27年)の同名小説です。これを松竹映画が木下恵介監督、高峰秀子主演で映画化し、全国的なヒットとなりました。

この映画は、戦前の社会(共産主義・プロレタリア思想の取締りや戦争による軍国化)などが背景となっていますが、単なる反戦映画ではありません。そもそも反戦と云う考え方は戦後の平和教育によるもので、当時の人たちの多くにとっては、戦争は避けて通れない国家・民族の宿命と考えられていたと言えます。ですから、国が悪い、政治家が悪い、軍隊が悪いと糾弾するのではなく、自分たちが国と運命を共にし、その中で家族や親しい人々を失ったという共通の喪失感と悲しみを自分の心の裡に秘めていたのです。昭和初期の小豆島を通して、漁村での貧しい暮らしの中で、懸命に生きる人々や子供たち、太平洋戦争という大きな時代の流れに翻弄される人たちは、当時の等身大の日本人であり、そのまま自分自身や家族などを重ね合わせて多くの人が涙しました。

ただ、この映画には半世紀を経ても変らぬ普遍のテーマ、生きることの厳しさや、人と人との繋がりを通して学ぶ楽しさ・哀しみなどの豊かな情操を持つ大切さなどがあります。監督・脚本の木下恵介は、映画ならではの小豆島と瀬戸内海の風景を舞台に、登場人物をこの美しい日本の風土に溶け込ませるように、過剰な演出を廃しながらも、極めて繊細で叙情的な作品を作り上げました。BGMに使われている数々の童謡・唱歌も非常に効果的に日本人の郷愁を掻き立てます。ノスタルジックなストーリーで語られているのは、人間の無償・無垢な愛。大石先生の12人の子供たちに寄せる愛は、母親が子供に持つこの至上の愛情です。「二十四の瞳」の素晴らしい点はその人間・人生讃歌にあります。

名女優・高峰秀子の優しさあふれる見事な演技と子供たちの自然な演技と存在感は、その後に作られたこの映画のリメイク・ドラマ化作品でこれを超えるものはありません。(日本における学園ドラマの原点でもあります。)高峰秀子という女優を語る人も少なくなりましたが、戦後日本の最初のアイドル女優、それも確かな演技力を持って、日本映画の全盛時代を牽引した大女優です。女優業以外でもエッセイストとしても有名です。
ちなみに、この映画はキネマ旬報昭和29年度の邦画部門で、黒澤明「七人の侍」、溝口健二「近松物語」・「山椒太夫」、成瀬巳喜男「山の音」・「晩菊」など、巨匠たちの名作を抑えて、第一位になった世界に誇る日本映画の傑作です。映画はいろいろな時代や設定を用いて、観客にエモーショナルな感動を与えますが、普通の人たちひとり一人の平凡と思える人生そのものが、多くの感動に満ちているということを、この映画は伝えています。

大石先生は自発的に子供たちやその家族の人生に関わり、そこで自分自身の喜び哀しみ、限界を知ります。人間的な成長です。そしてその過程において、主役の大石先生と12人の子供たちだけではなく、周囲の人々にもその人なりの人生があることを、観客は感じ取ることができます。主役たちが周囲から浮き上がって、独りよがりでつじつま合わせのようなストーリーとなることなく、木下恵介は絶妙なバランスでこの作品を作り上げました。それがこの映画が日本映画の傑作である由縁です。

「二十四の瞳」の映画のあらすじはWikipediaにも載っていますが、それを読んで納得するのは大きな間違いです。この愛すべき映画には、観てこそ伝わる感動が必ずあります。そしてその体験は、あなたの人生をより豊かにしてくれるはずです。

二十四の瞳wikipedia あらすじはウィキでどうぞ。
壺井 栄(つぼい さかえ)wikipedia
高峰秀子wikipedia

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