「美女と野獣」ジャンコクトー:Jean Cocteau’s La Belle et la Bête (Beauty and the Beast)

La Belle et La Bete- Opera- Promenade in Garden
美女と野獣: La belle et la Bête (1946) 予告編
La Belle et la Bête (1946) Part.8 En Français
ジャンコクトー(1889年-1963年)の「美女と野獣」(La Belle et la Bête:1946)です。
ディズニーアニメーション「美女と野獣」(Beauty and the Beast)の元となった映画です。ここには、鮮やかな色彩やロマンチックな主題歌もありません。大掛かりなセットも、今のような精巧な特殊メイクやエフェクト映像もありません。なにしろ戦争直後の古いフランス映画なのですから。
しかし、このモノクロームの陰影に富んだ美しい映画には、それらを凌ぐ詩的な物語と豊かなイマジネーションが溢れています。ジャンコクトーは、シュルレアリスム運動にも参加した作家・詩人・画家ですが、その才能がこの映画に溢れています。それは、喩えれば夢の中で繰り広げられる御伽噺の光景を見ているようです。夢に見る光景は、不確かなようでもありながら、不思議なビジョン、イメージを残すものです。遠い昔に見たこの映画がいつまでも心に残っているのは、そんな記憶でもあるようです。モノクロームの夢、定かなざる夢、朧なる言葉を超えた記憶の中にロマンスを感じるのかもしれません。こんな説明では映画を言い表せませんが、兎にも角にもこの美しい映画は見ておくべき傑作でした。
第二次世界大戦終結直後に制作されました。この映画には当時直面した過去の悲惨な現実はまったく描かれてませんでした。見方によっては、現実から逃避した映画作品と思われるかもしれません。しかし人は、ファンタジーという、かりそめの夢からのほうが、満たせれぬ現実生活の糧よりも多くのものを得ることもあります。それはこの映画が、いかに多くの人びとに長く親しまれたことからも伺い知れるとも思います。
この映画は、ディズニーのアニメーションとは違う結末です。しかしその結末こそがこの映画の主題を明確にしているものでもあります。つまり、「美女」と「野獣」は外見ではないということです。ディズニー映画「美女と野獣」は素晴らしいリメイク作品ですが、この主題が少し希薄になっていたように思います。
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