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『ロビンソン・クルーソーの生涯と冒険』

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『ロビンソン・クルーソーの生涯と冒険』
(The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe)1719年
Danierl Defoe

イギリスのジャーナリストで小説家でもあったダニエル・デフォー(1660-1731)は、ロンドンの肉屋の子として生まれ、商人になった後、政治活動、様々な文筆活動を行った。1719年、58歳の時に 《The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe》 を著した。この物語はアレクサンダー・セルカーク(Alexander Selkirk, 1676-1723)という靴屋の息子が、チリ海岸沖の無人島Juan Fernandezで暮らしたという実話からヒントを得て書いたものといわれています。
日本では江戸時代に江州膳所藩の蘭学者黒田盧行次郎(安政10年-明治25年)が江戸留学中の嘉永三年(1848)頃、デフォー『ロビンソ ン・クルーソー』の蘭訳全訳本の第一巻を通読し、「漂荒紀事」と題して著しました。明治5年に上梓され、第一巻を 『魯敏遜全傳』 と題して斉藤了庵訳の名で刊行されました。後に全文は大正2年刊の 『文明源流叢書』 第一に収められました。

横山保三(由清)訳による略本「魯敏遜漂行紀略」(安政四年、1857)は薄い冊子に編集されたダイジェスト版であり、今の子ども向けの冒険物語の原型かもしれないません。
幕末から明治にかけての近代日本が、海外への拡大政策をとったことも、この物語は外の世界への憧れとともに航海・冒険談として大いに受け入れられたのでしょう。
しかしこの物語には絶海の孤島における自給自足の生活を描き出す冒険のみを描いてはいません。物語の多くの部分を占める孤独な生活から神の発見に至る道程を画いた、教理問答書という当時のイギリス人の宗教的教義の側面があります。この部分は江戸時代から明治時代の日本人にとっては理解しがたく退屈な部分として割愛され、冒険談のみが残ったのだと思います。今般、中央公論新社から出た増田 義郎(マスダ ヨシオ)訳・解説「完訳ロビンソン・クルーソー」が刊行されましたが、当時の英国人の経済・宗教観が省かれることなく翻訳されています。好奇心を刺激させられるのは、時代の中での個人の観点です。大人が読む知的冒険談として楽しめます。

訳者

1928年、東京生まれ。東京大学教授を経て東京大学名誉教授。専攻は文化人類学、イベリアおよびイベロアメリカ文化史。著書に『掠奪の海カリブ』『黄金の世界史』など、訳書に『海賊大全』『ナスカ地上絵の謎』など。

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