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Lale Andersen
1905年3月23日~1972年8月29日



鈴木明氏の著書(文藝春秋 絶版)
「リリー・マルレーンを聴いたことがありますか」

リリー・マルレーン
「二十一時五十七分にはベオグラード放送にダイヤルを」


「リリー・マルレーン」はとても悲しい歌です。第二次世界大戦では、ドイツが占領したベオグラード放送から毎夜流れるこの歌にドイツ兵だけでなく、イギリス兵をはじめ、連合国側の兵士たちが耳を傾けていました。イギリス軍はドイツの放送を聴くことや、この歌を口ずさむことも禁止しましたが、効果はありませんでした。
当時、「二十一時五十七分にはベオグラード放送にダイヤルを」を合言葉にこの歌は国を超えて愛唱されました。
何故こんなにも愛されたのか?鈴木明氏の著書「リリー・マルレーンを聴いたことがありますか」に象徴的な引用文があります。
「…たとえ命令違反になっても、われわれは敵軍のラジオ放送をきいていた。イギリス軍は、カイロやアテネに立派な放送局を作って、ドイツ軍に訴えていた。だが、敵軍の放送をきいているのはわれわれだけではなかった。イギリス第八軍の捕虜の話によれば、イギリス兵氏たちもまた、ドイツ軍の放送をきいていた。特に、ベオグラードから放送される”リリー・マルレーン”は彼らのお気に入りだった。そのセンチメンタルなメロディは、われわれ戦う両軍のあらゆる人たちに、この世には爆弾や砂漠以外にたくさんのものがあることを、今さらのように思い出させていた…」(砂漠のロンメル将軍)
故郷に残してきた恋人や妻や家族への想いをこの歌が喚起させたのでしょう。明日、いや数時間後には戦死するかもしれない。そして、もう二度と愛する人に会えないかもしれない。親しかった戦友たちも次々と死んでいった。次は自分かもしれない。敵国の兵士たちも同じ気持ちでこの歌を聴いているのだろうか?自分たちと変りはないじゃないか。しかし、戦わなければ自分が殺されてしまう。そんな状況下で聴いた歌だからこそ強く人々の心に残ったのだと思います。

日本ではマレーネ・デートリッヒの歌として有名ですが、元はララ・アンデルセンが歌ったものです。
デートリッヒは慰問の際にイギリス兵士たちが歌っているのを聞き、自分のレパートリーに加えました。「Lili Marleen」が英語の「Lilli Marlene」になったのはこのときです。ナチス・ドイツから逃れてアメリカに渡り、連合国軍の慰問に従事したデートリッヒは長らく多くのドイツの人々からは「反逆者・売国奴・裏切者」と思われていました。そのことがどれだけ彼女の心を傷めたかは想像に難くありません。ドイツ語で歌うデートリッヒからは、悲劇の祖国を想いながら離れていったひとりのドイツ人としての悲しみが伝わります。それは、とりもなおさずドイツという国の悲しい歴史の思い出であるかも知れません。彼女はユダヤ人の国、イスラエルでもこの歌をドイツ語で歌いました。毅然として自分もドイツ人であることを示すように、そして、静かに力強く、加害者である国も、被害者である国も、そのひとり一人は変らぬ人間であることの悲しみと苦しみを込めて。デートリッヒの「リリー・マルレーン」は、彼女だけの「リリー・マルレーン」だったのだと思います。彼女の心のなかでは、戦争はその生涯を閉じるまで続いていたのです。ヨーロッパの多くの人がそうであったように。
しかし、今でもドイツの人たちの多くが愛しているのは、ララ・アンデルセンの「リリー・マルレーン」のようです。祖国ドイツを離れることもなく、大戦終結までは、もてはやされることもなく、戦後の歌手活動でも、華美になることもなかったララ・アンデルセンにより親しみを感じるのだと思います。

リリー・マルレーンは、世界各国で訳されています。日本でもいくつかの訳がありますが、英訳を参考にしてか、単に「会えない恋人への想い」の歌になっている場合が多いようです。「リリー・マルレーン」は戦争という悲しい時代を背負った歌ですから、原詩を超えることはできません。ならば無理に訳さないほうが良いのではないかと思いますが、どうでしょうか?

左の訳はドイツ語の原詩を知っていただくため、ほぼ原詩とおりにしています。よく分からないところは少し適当ですのでお詫びしておきます。
(1小節目は導入部、2小節目は幸福だった日の思い出、3小節目は強い気持ちの表現、4小節目は不安感、5小節目は果たせぬ願いという構成です。「静寂のなかで 地の底で」は「静まり返った夜の塹壕のなかで」といった意味だと思います。


下はYoutubeで聞けるリリー・マルレーンの歌です。

Lale Andersen


Marlene Dietrich


Nina Hagen & Nana Mouskouri - Lili Marlene

ドイツ語原詩の拙訳

兵舎の前
大きな門のわきに
今も街灯が立っている
それは今でもたっている
その下でまた会おう
あの街灯の下に2人で
もう一度 リリー・マルレーン

2人の影は1つに重なり
私たちが愛し合っていることは
見ていた皆にも分かっていた
その街灯の下に
皆に見えるように二人で立とう
あの時のように リリー・マルレーン

歩哨の呼び声
帰営ラッパが鳴る
遅れれば三日間の営倉入り
戦友たちよ いま行く
二人の別れの合図
でも君と一緒にいたい
君だけと リリー・マルレーン

街灯は知っている
君がそこに来ることを
いまでも街灯は灯るけど
僕はそこに立てなくなった
街灯の側に誰かが立っている
君は誰かとそこに立っているのか?
君となのか リリー・マルレーン?

静寂の中で
地の底で
夢のように
君の唇が目に浮かぶ
あたりを霧が包むとき
あの街灯の傍らにに立ちたい
もう一度 リリー・マルレーンと

Lili Marleen

Vor der Kaserne
Vor dem großen Tor
Stand eine Laterne
Und steht sie noch davor
So woll'n wir uns da wieder seh'n
Bei der Laterne wollen wir steh'n
Wie einst Lili Marleen.

Unsere beide Schatten
Sah'n wie einer aus
Daß wir so lieb uns hatten
Das sah man gleich daraus
Und alle Leute soll'n es seh'n
Wenn wir bei der Laterne steh'n
Wie einst Lili Marleen.

Schon rief der Posten,
Sie blasen Zapfenstreich
Das kann drei Tage kosten
Kam'rad, ich komm sogleich
Da sagten wir auf Wiedersehen
Wie gerne wollt ich mit dir geh'n
Mit dir Lili Marleen.

Deine Schritte kennt sie,
Deinen zieren Gang
Alle Abend brennt sie,
Doch mich vergaß sie lang
Und sollte mir ein Leids gescheh'n
Wer wird bei der Laterne stehen
Mit dir Lili Marleen?

Aus dem stillen Raume,
Aus der Erde Grund
Hebt mich wie im Traume
Dein verliebter Mund
Wenn sich die späten Nebel drehn
Werd' ich bei der Laterne steh'n
Wie einst Lili Marleen

Underneath the lantern,
By the barrack gate
Darling I remember
The way you used to wait
T'was there that you whispered tenderly,
That you loved me,
You'd always be,
My Lilli of the Lamplight,
My own Lilli Marlene

Time would come for roll call,
Time for us to part,
Darling I'd caress you
And press you to my heart,
And there 'neath that far-off lantern light,
I'd hold you tight ,
We'd kiss good night,
My Lilli of the Lamplight,
My own Lilli Marlene

Orders came for sailing,
Somewhere over there
All confined to barracks
was more than I could bear
I knew you were waiting in the street
I heard your feet,
But could not meet,
My Lilly of the Lamplight,
my own Lilly Marlene

Resting in our billets,
Just behind the lines
Even tho' we're parted,
Your lips are close to mine
You wait where that lantern softly gleams,
Your sweet face seems
To haunt my dreams
My Lilly of the Lamplight,
My own Lilly Marlene
鈴木 明(1929年10月28日-2003年7月22日)1973年『「南京大虐殺」のまぼろし』で第4回大宅壮一ノンフィクション賞。