ブログトップへ アート関係ページへ 映画関係ページへ 音楽関係ページへ 本のページへ トピックスページへ インターネット関係ページへ
フェリーニ「甘い生活」

La Dolce Vita

La Dolce Vita

Federico Fellini
フェデリコ・フェリーニ

La Dolce Vita
邦題 「甘い生活」
監督 フェデリコ・フェリーニ
フェデリコ・フェリーニ(Federico Fellini, 1920年1月20日 - 1993年10月31日)
イタリア・リミニ生まれの映画監督、脚本家。

「甘い生活」は1960年に公開されたフェデリコ・フェリーニの代表作です。それ以前の作品とこの後の作品を見ると、それまでのネオリアリスモ的作風から寓話的・退廃的なイメージが散りばめられた作風に変化してゆく過程にあると言われています。。
公開当時、この作品は難解であると言われましたが(批評家が「難解」と評するのは、実はその作品への批評をしないと宣言するときに使う常套句だと思いますが・・)今見てもそんな印象は感じられません。
「道」にもすでに現れていましたが、フェリーニの映画には一貫したストーリーがあまり感じられません。断片的なエピソードやシークェンスを並列することで作品が構成されています。観客は次々と展開される興味深い挿話の連続を目にし、自身の感性との同調あるいは反発を体験します。もちろん、映画には大筋はありますが、ストーリーを語れと言われるとちょっと困ります。「難解」と評されるのはこのストーリー性の欠如にあると思いますが、かといって「難しい映画」ではありません。観客は映画に散りばめられたエピソードやイメージから発せられる感性(または叙情性)を受けとるだけです。この無秩序の中で均衡を保っている作品世界まるで、多様な要素で構築されたバロック絵画のようです。あるいは「夢」の世界に近いかもしれません。(フェリーニのこのイメージを重ねる手法は後のミュージック・クリップやコマーシャル・フィルムに大きな影響をあたえました。日本では寺山修二の映画などもフェリーニのこの手法を用いています。)
ですから、一つ一つのエピソードを取り上げてを単に当時のイタリア社会への風刺劇と評するのは的外れです。それは映画を構成するジグソーパズルの1ピースであるからです。

この映画では、断片的と思えるエピソードや奇想的なシンボルのイメージはマルチェロ・マストロヤンニが演じる主人公の現実と夢が交錯した心象風景と捉えると理解できると思います。仕事に追われ、快楽を求めつつも何か満ち足りない主人公もカリカチュアされた現代人のシンボルですが、映画の狂言回しの役割も担っています。スキャンダルを追い、都会の生活に倦怠を感じている主人公が、回り舞台の上で演じられる様々な人間の愚かさと豊かさを目にし、映画の最後に見る海辺のシーンに至るまでの心の巡礼の物語です。しかし映画のはじめと終わりでも主人公の置かれている状況は何ら変わりません。フェリーニ自身が既成の教訓的なストーリーを故意に排したのかもしれません。「甘い生活」はこれからも続いてゆきます。

では、この映画はニヒリズムが主題かというと、まるで反対の答えになります。
この作品でも名作「道」に代表されるようなどんな人間にでも開かれたフェリーニ独特の人間に対する肯定的なヒューマニズムが感じられます。
フェリーニの作品はどのような人間に対しても許容しています。登場する人々は現実離れする寸前までカリカチュアされてはいるものの、誰もがとても個性的です。ほんの一瞬登場する通行人のひとり一人まで、皆それぞれの人生があるのだと言っているようです。ときには主人公よりも魅力的な人々さえ登場します。今もそうですが、その他多数の没個性的な人たちの中で主人公たちだけが浮き上がって見える映画よりもよほど現実的です。
それらの人々を見守るフェリーニの視線に否定や軽蔑はまったくありません。
モノクロの田舎の風景や巨大な毒々しいまでの極彩色の映画セットの中で演じられる群像劇。フェリーニの映画には、人間の悲喜劇、自己と他者との葛藤、人間の優しさ、逞しさ、狡さ、そうした条件と矛盾のすべてを許容する眼差しがあります。それが、いつまでも色褪せない作品の魅力であり、心に残るものだと思います。
フェリーニ作品のこの微妙な調律をニーノ・ロータの哀愁を帯びた音楽が一層引き立てています。


フェデリコ・フェリーニ監督作品

1950「寄席の脚光」Luci del varieta (共同監督)
1952「白い酋長」Lo Sceicco bianco
1953「青春群像」I Vitelloni
1953「結婚相談所」Un'agenzia materimoniale
(「巷の恋」Amore in citta`より)
1954「道」La Strada
1955「崖」Il Bidone
1957「カビリアの夜」Le Notti di Cabiria
1959「甘い生活」La Dolce vita
1962「誘惑」Le tentazioni del dottor Antonio
(「ボッカチオ'70」 Boccaccio'70より)
1963「8 1/2」8 1/2(Otto e mezzo)
1965「魂のジュリエッタ」Giulietta degli spiriti
1968「悪魔の首飾り」Toby Dammit
(「世にも怪奇な物語」Tre passi nel delirioより)
1969「サテリコン」Fellini-Satyricon
1970「フェリーニの道化師」I Clown
1972「フェリーニのローマ」Roma
1973「フェリーニのアマルコルド」Amarcord
1976「カサノバ」Il Casanova di Federico Fellini
1979「オーケストラ・リハーサル」Prova d'orchestra
1980「女の都」La Citta delle donne
1983「そして船は行く」E la nave va
1985「ジンジャーとフレッド」Ginger e Fred
1987「インテルビスタ」Intervista
1990「ボイス・オブ・ムーン」La Voce della luna


「甘い生活」冒頭のシーン

古代ローマの遺跡から現代のローマへキリスト像がヘリコプターに吊り下げられて飛来します。「スキャンダラスないかさま」?「キリストの再臨」?

「甘い生活」ラストシーン

(喧騒と退廃の一夜が明け、海辺に打ち上げられた奇妙な魚の死体を見に来た主人公に向かってひとりの少女が手を振って何かを伝えようとしているのですが、波の音で聞き取れません。・・・そしてまた元の「甘い生活」へ…)